今、奄美シマ唄は広がってきていますが、唄にとって大事な島の言葉が失われつつあるんです―
シマ唄がせっかく広がっている今だからこそ『シマユムタをもっと大事にしないと』と僕は思います

―さて、そろそろシマ唄大会(奄美民謡大賞)の季節が近づいてきましたね。ここ最近は参加者も増え、盛り上がりをみせているようですが?
真吾:確かに盛り上がってますよ、内地の人も沢山来ますからね。でも何が楽しいって、大会後の唄あしびなんですよ。大会は口実です(笑)。そういう機会でもないと、内地の唄者も集まらないんですよね。シマ唄大会を目標に来る内地の唄者たちに「本当に楽しいのは、これなんだよ!」って見せてあげたいです(笑)。
去年も若い人たちをいっぱい集めて、『朝花(あさばな)』だけで1時間くらいやったんですけど、カルチャーショックを受けた人も多かったようです。「きちんと唄う唄ばかりじゃないんだね」って。
お祝いの席ではかしこまりますけど、唄あしびは”遊び(あしび)”なんだから、そういう空気も感じてほしいと思います。本来のシマ唄の意義を、自分なんかを通して遊んでほしいと思うんです。
で、ついてこられなくなったら、「くやしいやー!」っち思う。僕もそうでしたから(笑)。唄あしびの楽しさが分かるまでは、ただただ、うまくなりたい一心で唄っていただけでしたから。
―私も唄あしびの場面は、何度も目撃しています。私は唄えませんけど、見ているだけで楽しくなりますね。
真吾:島の先輩もそうですよ。最初は遠慮して唄わないんですけど、一度宴が盛り上がってくると、どんどん乗っかってきますから。そのうち、言わんでも勝手に唄うようになるんです(笑)。そういうときの空気はたまりませんね。いい空気が、できてくるんですね。
―話がそれてしまいましたが…(笑)。大会の話をもう少し聞かせてください。
真吾:おもしろいと思うのは、シマ唄大会を見に来るじいちゃん、ばあちゃんなどのお客さんなんですよ。耳が肥えてるので、ある意味何よりも怖い(笑)。昔から当たり前のように唄を聴いてきている方々ばかりですからね。
うまい唄者なんかが出てきても、「いいねー、声もいい。でも何かが足りない!」なんて指摘をしちゃう人もいます。
―その”何か”というのはなんでしょう?
真吾:そこを今のじいちゃん、ばあちゃんが元気なうちに聞いておかないとって思うんですが、シマユムタ(島の言葉)もそのひとつではないかって思います。
今、奄美シマ唄は広がってきていますが、唄にとって大事な島の言葉が失われつつあるんです。今の島の人でも、シマユムタを正しく喋れる世代ってのは50代の後半ぐらいではないでしょうか。シマ唄がせっかく広がっている今だからこそ『シマユムタをもっと大事にしないと』と僕は思います。唄だけ残っても、シマユムタが消えてしまっては何にもならないと思うんです。
―それはなぜでしょうか?
真吾:シマユムタは文化ですから。今のじいちゃんばあちゃんがいなくなったら、島の言葉でしゃべってるあの空気感も無くなるんですよ。難しいんですけど、それはすごく大事なものなんです。自分なんかは全然しゃべれませんからね。いくら唄がうまくても、発音が中途半端になってたら、「懐かしゃが欠けちゃうよ」って感じます。
―「島の言葉を残したい」という話は、よく聞きますね?
真吾:今の時代は、「シマユムタを喋るのはお年寄りだけ」というイメージが強いと思います。僕も、シマ唄を始めるまではそんなイメージを持っていたんですよ。でも、昔は若い人も喋っていたわけです。島の人にとって当たり前だった言葉が「標準語を喋らなければならない」という教育によって消されていってしまいました。
確かにそれがないと、内地の人ともコミュニケーションを取れなかったとは思いますけど、「喋るな!」って、強制までしなければいけなかったのかというのは疑問です。(島の言葉を喋った者に対して)罰を与えることまでしていましたからね。
でも、今後は唄と同時に言葉や発音などを、若い人も積極的に学ばないといけないと思っています。これも、批判するのは人それぞれなんですけど、僕はそれがシマ唄の文化だと思ってますから。今、シマ唄が盛り上がってるというのを第1ステップとするなら、次はもっと高いところへ好奇心を持っていければ、次の世代にも伝えていけると勝手に思っています。
―本日はお忙しい中、ありがとうございました。最後に、一言メッセージをお願いします。
真吾:奄美に興味がある方は、ぜひ島に来てくださいね。
島の空気を吸って、自然を見て、食べて、飲んで、僕たちが唄うシマ唄を聴いてください。
「唄に感動!」とかじゃなくて、「本当に島やシマ唄が好きなんだね」って感じてくれるだけで、それだけで僕たちは嬉しいんです。
(インタビュー:中ノ島万太郎)
前山真吾 プロフィール
1983年、奄美大島・名瀬市(現・奄美市名瀬)に生まれる。
高校時代より、洋楽に触発されギターを弾き始めるが、偶然聞いたシマ唄がきっかけで、卒業後は三味線を手にするようになる。
奄美でも、最もディープと言われる宇検村の石原久子に師事を仰ぎ、一本芯の通った力強い唄を磨いていった。また、フィールドワークも多数行い、個性的な唄と歌詞を身につけていく。
奄美大島をホームに活動しているが、内地でのイベントにも多数参加。現在、最も注目されている若手唄者の一人である。
2005年、「奄美民謡大賞」で新人賞を受賞。2006年2月、奄美の若きアーティストを集めたコンピレーションCD「マジムン」に参加。 同年10月、初の単独での作品となる「星降ル島ヌ唄」を発売。
【前山真吾公式blog】 http://samusen.exblog.jp/
作品紹介
「マジムン/V.A 」
(マリカミズキ、牧岡奈美、バナナマフィンら参加)
品番:JAB-34 価格:\2,835(税込)
全17曲収録
「星降ル島ヌ唄」
品番:JAB-36
価格: \2,835(税込)
[収録曲]
1.あさばな節
2.俊良主節
3.くるだんど
4.らんかん橋
5.ヨイスラ節
6.側家戸節
7.国直米姉
8.しゅんかね節
9.あんちゃんな節
10.朝別れ節
11.かんつめ節
12.徳之島節
13.むちゃ加那
14.きんかぶ節
15.イトゥ
※以上、ジャバラレコード 【HP】http://www.amami.com/jabara/