■先田光演 【沖永良部民俗学】
vol.2 サンシルにのせて唄い継がれてきたシマ唄
三味線のことを、沖永良部島ではサンシルといいます。沖縄でもサンシンといい、「三線」あるいは「三弦」という意味です。
沖縄のサンシンは、叩きつけるように強く響き、明るい音を出します。"えらぶ"のサンシルは、弦をはじいてすぐ返して弾くために、音が寄り添いながら共鳴していきます。そのために、か細く聴こえることがあります。それはそれで、たまらない魅力を感じます。
あるサンシルの弾き手は、女性とサンシルは扱えば扱うほどクイ(深みのある声)が出ると語ってくれました。サンシルも女性も本筋愛している人の至言だと感心しました。
物資の不足していた戦後20年代までは、島のニセ(青年)たちは、手作りのサンシルを弾いて遊んでいました。
手作りのサンシルには蛇皮を張るお金はありません。島の人たちは、先祖代々見事な代用品を受け継いできました。自生している芭蕉(イトバショウ)の根子を切り倒して、そこから出てくる渋を集め和紙に塗ると、その和紙が皮のように強くなります。それを7、8枚重ねると蛇の皮に負けない強さになります。この和紙を張って、シブサンシルを作りました。
黒木蛇皮張りゃ 弾ちゅてぃ唄待ちゅい
哀りシブバリや 唄に押さてぃ
(訳)
黒木(堅い木で棹を作る)で作られた蛇皮張りのサンシルは
音高く響いて唄をまっていますが
哀れなシブバリのサンシルは 唄の高さに押されてしまいます
手作りのシブサンシルをこう表現しました。しかし、シブサンシルは蛇皮張りに負けてはいませんでした。乾燥した冬場の夜中に弾くと、シブサンシルの音は冴えて1里向こうに響き渡ります。その音色は風の音と交ざりあって恐ろしい程までに美しかったといいます。
此ぬ世振り捨てぃてぃ あぬ世行く迄む
友達とぅサンシルや 忘りならむ
(訳)
この世を捨てて あの世にいくまでも
友達とサンシルは 忘れることはできません
かつての島のニセたちはサンシルに思いを乗せて弾き、それに合わせてメーラビたちが(女童)唄いました。こうして貧しいながらも青春を謳歌した古き良き時代は、遠い昔語りになりました。
それでも、島唄の歌詞には、まだほそやかに、当時のニセやメーラビたちの青春時代のときめきが唄い継がれています。
里や綾蝶 にぞや菊ぬ花
うりに付ちからや 飛びやならむ
(訳)
男性は綾模様の美しい蝶です 女性は菊の花です
その花に止まってからは 飛び立つことができません