高倉
古代日本においては全国各地で見られた高床式の倉庫で、その起源は台湾やフィリピンなどの南方地域にあるとされる、穀物を貯蔵する目的の建物を「高倉」と言います。現在日本では南西諸島や八丈島でも残されていますが、実際に使用されているのは奄美だけだと言われています。
■高倉の構造
高倉は高床式の倉庫で、叉首組(さすぐみ)の屋根架構に茅を葺いた屋根の、ちょうど屋根裏が倉庫部分にあたります。そのため、通気性がよく湿気を防ぐので腐敗防止にもなり、湿度の高い奄美に非常に適した建築物だと言えるでしょう。
また、高倉の茅葺き屋根は住居の茅葺き屋根よりも肉厚に葺く(奄美では逆葺きに葺く)ので、強い太陽熱からも守ってくれます。倉庫内は、穀物はもちろんのこと黒砂糖、味噌、魚介類、豚肉、衣類まで保管していました。床下部分も強い日差しや雨をしのぐことができるので、快適な作業場でもありました。それ以外にも晩酌をしたり、唄遊びや語らいの場としても使われ、また子どもたちにとっても身近な遊び場として親しまれています。
高倉は、構造上ハナ倉(うで倉)とサシ倉(ます倉)に分類できます。
ハナ倉とは、根太(ねだ。床組の一部で、荷重を分散する役目の横木)の反りの繰り返しが美しく、その華やいだ雰囲気がハナ倉の語源だとも言われます。
またサシ倉とは、根太や梁などをホゾ差しして床組とし、床を張った構造です。
ハナ倉は奄美大島、喜界島、徳之島に、サシ倉は主に徳之島、沖永良部島、与論島に分布しています。
■高倉の特徴
高倉は、イジュ(椿)を用い、鉋でよく削って磨くことでネズミはつめを引っ掛けて登ることができないようになっています。
高床式であるということの機能としては、上り下りに梯子を使うということで、原始的ではあるが防犯の機能を果たしているということがまず挙げられます。
また、奄美に多い台風の被害に対しては、高床であることで強風は床下を通り抜けるため、揺れはするが倒れることはありません。
火災に対しては、逆に柱の楔と貫を引き抜けばたやすく倒すことができ、倉庫内の貯蔵物を容易に取り出すことができ、被害を最小限にとどめることができます。
そして地震については、高倉の柱が礎石の上に乗っているだけの構造から、倒れるのではなく柱がずれるだけで、まるで歩いているかのように高倉が移動するだけにとどまる可能性が高いとされています。
■高倉新築の決まり「カフカ」
高倉を新築する際には、ある決まりに則って日取りを決めていました。それが「カフカ」と呼ばれるものです(カフカの日取りは、正月丙丁、二月丙丁、三月戌己、四月戌己、五月戌己、六月甲乙、八月甲乙、九月庚申、十月庚申、十一月庚申、十二月丙丁の11日を指す)。
カフカとは、陰陽道に定められた日のひとつであり、この日には生き物の生命力を封じる力(生き物の害を防ぐ力)があるとされています。これに則って高倉を新築することで、ネズミなどの害から高倉を守ることができるというのです。
高倉を建てる工程は、初めて山に入る日、作業に取り掛かる日、棟上の日、屋根を葺く日など7工程に分かれる。しかし、その全てをカフカに行うと高倉があまりに強い力を持ちすぎ、ネズミやスズメだけではなく人間までも命を落としてしまうことがあるからです。そのため、カフカは3〜5くらいをあわせて建てるのがよいとされます。
取材協力・資料提供/藤岡明日香